尚志館管理人

2019年10月7日5 分

押忍

オッス!オラ、管理人。みんな元気してっか?

という事で、みなさんこんにちは。管理人です。

いきなりですが、今週は野沢雅子風の出だしでスタートしてみました。

今回取り上げる記事はタイトルにもある通り空手家なら必ず使う『押忍』のお話。

前置きできっとスベってると思うので、早々に本題に参りましょう。


道場に来ればみんな一度は『押忍』って挨拶しますよね。

そもそも押忍ってどんな意味なんでしょう?意味は分からないけど、取り敢えず「押忍!」って挨拶している人はいませんか?

実際海外で空手を始めとした武道を学ぶ人の間でも挨拶は「オス!」です。字で書くなら「OSS」とか「OSU」といったアルファベットで表現されますが、漢字と違って音だけで表すと外国人にとっては意味も分からず、取り敢えず「オス!」っていう人も少なくないと思います。

なので、いくら漢字が表意文字だとは言え、日本人でも「『押忍』の意味なんて知らねーよ!」という人が居てもおかしくないですよね。

そもそも入門しても「空手では返事は『押忍』って言うんだよ」としか教わって無い人だって沢山いるはず。実は管理人もそんな一人です。

学生時代は、いいからとにかく何でも「押忍」と教わりました。

とは言え、私も今年でアラフォー最終年。子を持つ親として、そして日本人として『押忍』の意味も分からないのは恥ずかしかろう、という事で調べてみました。

所説あるようですが、共通して言えるのは最初から意味を持って作られた言葉ではないらしいという事。「オス」という言葉が先にあって、それに「押忍」という漢字を当て嵌めたというのが有力らしい。当て字なので本来意味は無い筈ですが、当てる際に武道らしく「押して忍ぶ」という漢字を選び「自らを抑え(押さえ)我慢する(忍ぶ)」という意味を持たせたという事だとか。

後付けかよ!というツッコミはさておき、では最初の「オス」自体はどこから来たのか?

これも色々ありますが、有力なのは「はようございま」の略だという事。

つまり、現代の運動部で「こんにちは」が

「こんちはーッス!」⇒「ちわーッス!」⇒「ちーッス!」

になっていったように

戦前の武道家たちの間で「おはようございます」が変化していったらしいというのだ。

何という事だろう・・・

学生時代、部室や稽古場に入る時、稽古で不備を指摘をされた時、校内外問わず先輩とすれ違う時、そして先輩から理不尽なお遣いを命じられた時・・・

なんか今、20数年前の悲しい記憶が蘇ってしまいましたが、こんな時全てに『押忍!』と言っていたアレは、実は「おはようございます」だったというのか!!

『なぁ、生協で肉丼買ってきて。あとコーラも。』

(はようございま)!』

もうハチャメチャである。会話になってない。これでは外国の方には紹介できない。

まだ時節を弁えず「おはようございます」と挨拶するマスコミ業界の方が理に適っている。

やはりこの由来は闇に葬り去り、武道家らしく「押して忍ぶ」と解釈するのが無難そうだ。

となると次の問題は、『押忍』では一体何を押し忍んでいるのか?という事。

これから足の裏のマメが剥けちゃたり、腕や太ももが痣だらけになるキツーイ稽古が始まる事だろうか、それとも爽快な朝から通学路でコワーイ先輩とすれ違い、いきなりブルーになってしまったことだろうか?

いやいや、生協イチの人気メニューを売り切れ時の代替品も指定しないまま、昼休みも終わろうかというこの時間に、しかも代金立替えで買ってこさせる事か。

ここまでくると「押して忍ぶ」というより「耐え忍ぶ(忍耐)」の方が適切な気がしますが、

『そんなの昭和の話でしょ?』

と思ったアナタ。そんな事はありません。

令和になった今でも、武道系運動部の間では、大なり小なりこの風習は残っている筈です。

私だって生まれは昭和でも学生時代は平成ですから。

まぁ半分は冗談としても、今でも道場に入る時や挨拶、師範の指示に対する返事など、受け答えとして『押忍!』は空手の文化であり精神として根付いています。

そんな万能な挨拶の『押忍』。先程のようなシチュエーションかどうかはともかく、空手界では様々な使い方で応用されています。

その名も

『押忍五段活用』

普通の人には何を言っているのか?という感じですが、大学で武道系に籍を置かれていた方からすれば、「あ~、アレね・・・」というヤツです。

どんなものかというと・・・

同意の「押忍」:「オスッ!」

反対の「押忍」:「(弱気に)ォス・・・」「オス、いえ○○です!」

疑問の「押忍」:「オス!?」(語尾を上げて)

驚きの「押忍」:「ぉおオッス!」(驚く表情と共に)

挨拶の「押忍」:「オス!」(おはようございます、さようなら、ごめんなさい等全て)

の5種。活用形かと言われると疑問ですが、アクセントなどを変えながら、押忍だけでコミュニケーションを取るという武道界の厳しい掟の中で生まれた巧みな技法。

(五段活用の用法には学校によって多少のバリエーションがあるかも知れないです)

因みに私の場合は、五段活用すら許されていませんでした。何があったかと言えば、"同意"と"挨拶"の「押忍」のみ。

先輩の命令は絶対。反対は勿論、疑問を呈する事すら許されません。

(心の中では疑問だらけだったり、すっごくやりたくないと思っていますよ!)

とは言え、理不尽はともかく、同意できないような無理難題は年1回で有るか無いかの頻度なので、取り敢えず同意しておいて問題はなかったんですね。

そもそもそこまで悪魔のような先輩もいませんでしたし。

流石にこの歳になって道場で聞くことは無くなりましたが、年中”押忍押忍”ばかり言い過ぎて、社会人になってからもクセが抜けなくなっていた人、いるんじゃないでしょうか?

管理人も以前、社会人になったばかりの頃、上司に仕事の指示をされて思わず「押忍」と返事してしまった恥ずかしい思い出はあります。

という訳で長々とお伝えしてきた空手とは切っても切り離せない『押忍』のお話。

皆さん如何でしたか?深イイ要素が一つもない話でしたね。

子供たちもこんなダメな大人にならないよう、『押忍』は道場内で節度を持って使いましょう。でも言う時はは元気よく大声で!!

何よりも元気が一番です。

その後空手部に入部してしまった場合は、引退後に一日も早く社会に復帰できるようリハビリに励んで下さい。(笑)

という事で、今週のお話はここまで。

来週は秋の試合の初戦、抱一龕(ほういつがん)杯の模様をお届けしたいと思っています。

それではまた来週お会いしましょう!!

押忍ッ!(←さようならの意)

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