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太極の形

皆さんこんにちは。管理人です。

今週は形のお話。


現在空手協会の定める25の形がありますが、そこには含まれていないものの、昇級審査で使用される形があります。それは『太極初段』です。


子供向けの解説書には太極初段も記載されているので、いずれ形教本が改訂される時には追加されるかも知れませんが、皆さん何か疑問に思いませんか?


太極初段同様に、形名に初段とつくものには平安、鉄騎がありますよね。

どちらもそれぞれ、平安初段~五段、鉄騎初段~三段があるわけですが、何で太極は初段だけなんでしょうか・・・?


それは太極にも二段以降が存在するからです。

太極の二段と三段の型を残しているのは、松濤館流の別会派である日本空手道松濤会とフルコンタクト空手で有名な極真会館系統の2つと、名称は"太極○章"となりますが、意外にもテコンドーです。


暇つぶしを兼ねて色々調べてみたところ、松濤会についてはかなり情報が少なくどんな形なのかは分からなかったのですが、極真系は比較的色々な情報が出てきました。


総合すると、基本的な動線や挙動数は初段と同じで、異なるのは受け技と突きの高さです。

極真系でも道場や会派によってアレンジされているようですが、ザックリ言うと、

  •  太極二段:受けの一部を挙げ受け、突きは上段突き

  •  太極三段:後屈立ちまたは猫足立ちの内受け、突きの一部または全ては上段突き

という感じです。

因みにテコンドーの場合は、空手版の太極を更に複雑にアレンジし、前蹴りが加わったりしています。その為、挙動の違いを説明するのが面倒なレベルなので、ここでは割愛します。


なぜ今日の協会の形から消失しているのかは分かりませんが、形というのは流派や会派が分かれていく中で、それぞれ微妙な変化をしていくという事は既にお伝えした通りです。

以前のブログで、松濤館流・糸東流・和道流の観空(クーシャンクー・コウソウクン)の違いを基に首里手を源流とする流派では呼び方は違っても同じ系統を持つ形が存在する話題を載せました。では、この太極の形はどうなのでしょう?


同じ松濤館流を標榜する松濤会はともかく、極真会館やテコンドーが太極の形を継承しているのか・・・?

極真会館の開祖である大山倍達氏が、自身の流派を開く前に、船越義珍先生や剛柔流に空手を学んだのは有名な話です。その為、極真会館の型(協会では"形"と呼びますが、極真会館では"型"です)には首里手の基本形である平安形に相当するピンアンと一緒に、本来那覇手の基本型である三戦(サンチン)や撃砕が併存しているのは良く知られています。

(剛柔流は那覇手の流れを汲んでいます)

他にも鉄騎や観空など普段耳にしたことがある型名があるのも、由来を考えれば納得です。


ですが、何でテコンドーにまで太極の型があるのか?

それは、テコンドーも同じ空手、それも松濤館の流れを汲んでいるからです。


テコンドー黎明期における朝鮮半島内では、正式にテコンドーと命名されるまで、空手や唐手と呼ばれ、平安は勿論、抜塞や観空、更には鉄騎や慈恩、岩鶴など、所謂『松濤館15の形』が全て伝承されていました。型の名称も松濤館流の呼び名のままになっていたことからも、松濤館の流れを汲む格闘技である事が分かります。

(今ではアレンジがかなり加えられ、名前も読み方も韓国語のものになっています)


テコンドーもその過程で団体が分裂したりとまとまりが悪いですが、その片方の団体の型の中に太極という型名が存在し、動きとしてはテコンドーらしく蹴り技が加えられるなど、かなりアレンジがされていますが、動線や挙動の流れを見るにベースとしては松濤館の太極の形にあることが推測されます。


という事は、テコンドーの創始者たちが学んだ時期が戦後~朝鮮戦争前の時期にあたる事を考えると、今でも協会の総本部師範や故中山先生の薫陶を受けたご高齢の方々の中には、太極の二段以降を学んだことがある人も居るかも知れませんね。



え?ここまで書いておいて太極二段や三段の写真も動画も何も無いのかですって?

じゃあ、他所の流派における型の要諦が分からない為、どれがお手本レベルなのか分からず引用するのは憚られますが、折角ですので管理人目線でこの方はお上手だな、と感じたものを引用させて頂きましょう。

動画では後屈立ちが協会で言う猫足立ちのように見えますが、極真会館の猫足立ちはもっと歩幅が狭く、後屈立ちはこの立ち方のようです。

(管理人が経験したフルコン空手では後屈立ちが無かったので明言できませんが)

因みにこの動画の演武者ですが、故大山氏が設立した極真会館は、ご存知の通りその死後に分裂しており、その旧極真会館で名を馳せた廬山初雄氏が開いた極真館という会派の世界大会優勝者だそうです。

参考までに彼女が演じるナイファンチ初段の動画も載せておきましょう。

挙動としてはほぼ松濤館流の鉄騎初段と同じですが、細かい所作の違いはあるものの、それは流派なりの型解釈であり、立ち方など基本的な動きを見れば、流派は違えども相当稽古をされたのだろうことは容易に伺えます。


かつては協会にも慈恩に対して慈陰という形があったりするなど、形はその流派会派の解釈を経て少しずつ変化していくものです。

例えば同じ会派内でも、同じ形の同じ挙動に対して複数の解釈が存在したりします。これは空手協会における形が単なる鋳型ではなく、自身の血を通わせた形だからこそいろいろな解釈が生まれ、その結果一人ひとり味付けの違う形が演じられるのだろうと思います。


ということで今週は、太極の形を題材に少しだけ管理人が日頃考察していた空手ネタをご紹介してみました。



ここまで書いておいて言うのも何ですが、管理人は決して空手オタクではありません。

あくまでブログのネタを漁る為、時々インターネットの海へ漁に出る空手漁師です。

ちょくちょく宴会などで『色々空手の事ご存知なんですね』というお声掛けを頂きますが、ここに掲載される雑知識は、決してオタクが日々の積み重ねで蓄えた知識ではなく、ニワカの浅知恵なので、時々誤報が混ざっているかも知れませんので悪しからず。

ですが、私自身ブログやってなければ、一生知ることも無かったであろうウンチクたちなのも事実なので、大学時代はただ身体を動かすだけだった空手が、オッサンになって頭も少し使うようになったと思えば、こんなのも悪くないな・・・と最近思えてます。


そんな暇あったら稽古しろよ!!という声も聞こえてきそうですが、今後も稽古にも励みつつ、仕事はほどほどに・・・そしてネットの海での釣果が皆さんの空手ライフの一助になってくれれば幸いです。



さて、来週はいよいよ冬期の昇段審査会です。日頃の稽古でも居残って稽古をしている子供たちも増えました。尚志館からの受験者は多いようですが、結果は如何に!

そしてあと6日で管理人の骨折した小指は完治するのか!?(笑)


また来週お会いしましょう。


押忍


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